CSVへの取組み

本業による社会課題の解決

SDGs達成に向けてのロームの開発、技術戦略
~技術による世界への貢献~

ロームグループでは、世界共通目標であるSDGsの達成に寄与すべく、社会的課題の解決に結び付くCSV活動に積極的に取組んでまいりました。
製品を通じた社会への貢献として、省エネ、小型化や、安全、快適をキーワードに革新的な製品を供給しており、近年では、技術革新が進む自動車市場のほか、産業機器市場やIT機器市場など、幅広い分野に向けたキーデバイスを数多く提供しています。引き続き、3つのCSV戦略をベースに社会課題の解決を目指してまいります。

中期目標と実績

ロームは、2021年に始動した中期経営計画を達成する上で、重要な課題として「持続可能な技術の強化、革新的な製品の開発・供給」を挙げると共に、2025年度の達成目標を策定しました。

持続可能な技術の強化、革新的な製品の開発、供給
取組み背景・課題 「脱炭素」は全世界共通の達成しなければならない課題です。その課題達成に向けて、世界中で、電気自動車や再生エネルギーの活用など、環境負荷の大幅軽減に向けた技術革新が進んでいます。一方、自動運転などの技術が社会に広く浸透するに伴い、同時に安全性の確保も大きな課題となってきています。ロームの強みは「パワー」「アナログ」技術です。これらの技術を活用し、付加価値のある新たな技術・製品を開発・提供することで、地球環境の問題、そして安全な社会の実現に貢献してまいります。
テーマ
  • 省エネ製品の開発、市場への供給による貢献
  • 小型化製品の開発供給による貢献
  • 機能安全を追求した製品の開発供給による貢献
達成目標
(達成年度:2025年度)
売上を社会貢献の総量として、売上額6,000億円以上を達成する
※当初の目標4,700億円以上から6,000億円以上に変更
2021年度実績 売上額:4,521億円
【関連する取組み】
2022年度目標 単年度売上額5,100億円を達成する

CSV戦略① 省エネルギー化の追究

デバイス開発による大幅な省電力化の実現 ~世界一省エネルギーのデバイス開発、市場への投入~

  • 7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

社会的課題:人口増加に伴う、エネルギー消費量の増加が地球のバイオキャパシティを超える

企業の経営資源は、一般に「人、もの、金、情報」と言われていますが、この経営資源の土台となるのは、自然資本である地球環境にあります。持続可能な価値創造を生み出すためには、この自然資本の安定が不可欠ですが、私たちの経済活動により、現在は自然資本、環境の劣化が進み、それが巡り巡って経済活動の安定性を脅かしている状況です。2010年には69億人だった世界の人口は2030年には約85億人と急激に増加することが予測されています。そしてこの増加した人口が現在の先進国と同レベルのエネルギーを使用する場合、そのエネルギーを処理するキャパシティを確保するためには地球が3~5個も必要になるといわれています。このことから人類の活動により生み出されるCO₂を抑制し、地球の負荷を軽減することは、持続可能な社会、企業となるために取組まなければならない社会的課題です。

ロームグループは、使用エネルギーそのものを再生可能エネルギーに置き換え、CO₂の排出を抑制するのはもちろんのこと、半導体メーカーとして、市場に投入する製品そのもののさらなる省電力化に向けた技術開発を推進することが、エネルギー問題の解決につながると考えています。

社会的課題:人口増加に伴う、エネルギー消費量の増加が地球のバイオキャパシティを超える

ロームの取組み:省エネルギー化に貢献するパワーデバイスの開発

全世界の電⼒消費量20兆kWhの内、実に半分が「モーター」に使われていると⾔われ、仮に全てのモーター効率を10%改善できると、世界の全原子力発電所の1/3を削減できる計算になります。さらに残りの電⼒消費の中でカギを握るのが「電源」です。様々な電⼦機器では、細かな電圧変換のたびに、5〜20%のロスが⽣じており、この効率改善も⼤きな課題となっています。これら「モーター」や「電源」の効率改善のためのデバイスとして重要な役割を担うのが、パワーデバイスや電源ICと呼ばれる半導体です。ロームは、SiCデバイスをはじめとする世界最先端のデバイス提供を通じて、世界のエネルギー問題の解決に貢献してまいります。

大幅な省電力化を実現するSiCパワーデバイス

SiC(シリコンカーバイド)パワーデバイスは、従来のSi(シリコン)パワーデバイスに⽐べて動作時の損失が⼩さく、⾼速動作と⾼温特性に優れています。ロームは2010年にSiC MOSFET、2012年にフルSiCパワーモジュールを世界で初めて量産開始するなど業界をリードする開発を進めてきました。現在、これらSiCパワーデバイス製品は、自動車や産業機器などで幅広く採⽤され、その有効性を発揮し、社会の省エネルギー化、⼩型化に貢献しています。
今後もロームは、世界最先端のSiCを中⼼とした特徴あるパワーデバイスと、そのデバイス性能を最⼤限に引き出すゲートドライバなどの制御ICや、モジュール技術も組み合わせたトータルソリューションの提供により、様々なモーターやインバーターの⼩型、⾼効率化に貢献してまいります。

【担当者の声】
環境にとってより良い、社会を良くするための製品開発を

私は様々な分野の部品を統合して、顧客の商品の設計を考えたモジュール提案を行っています。
ロームが現在力を入れているSiCは、電力の損失を大きく低減し、電力変換の高効率化が可能という特長があり、太陽光発電のDC/DCコンバータで最大50%の電力損失削減ができたというデータもある、まさにロームの環境ビジョンを体現する製品です。私は現在、電動車用主機インバータ向けのSiCのモールドモジュールを開発しています。ロームのSiCを使った場合、SiCに対してインバータの性能がどれくらい改善するのか、定量的な評価も行っています。自分が作っているものが環境、社会をより良くするためのものという自負を持ち、自身の業務に誇りを持って取組んでいます。

パワー・ディスクリート事業本部 パッケージ開発部 技術員 柴田 幸太郎
パワー・ディスクリート事業本部
パッケージ開発部
技術員 柴田 幸太郎
パワー・ディスクリート事業本部 パッケージ開発部 技術員 柴田 幸太郎
パワー・ディスクリート事業本部
パッケージ開発部
技術員 柴田 幸太郎

CSV戦略② 小型化の追求

デバイス開発による原材料使用量の削減 ~最適化された高効率デバイスの開発、市場への投入~

  • 7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 12 つくる責任 つかう責任

社会的課題:限りある「地下資源」

今の⽣活を維持、そしてさらに発展していくために必要なテクノロジーは、電⼦部品を使った機器、機械に⽀えられています。現段階では、これらの電子部品、機器、機械は、天然地下資源を材料として作られており、それぞれの地下資源の採掘可能年数に限りがあることは、今後の⽣活を脅かす⾮常に⼤きな問題となっています。

ロームグループは、企業として限りある資源を有効に活用するために、廃棄物をリサイクル、再利用するのはもちろんのこと、半導体メーカーとして、使用する原材料を減らし、廃棄物そのものを削減する技術開発こそが、社会課題の解決につながると考えています。

社会的課題:限りある「地下資源」

ロームの取組み:最適化された高効率デバイスの開発と市場への投入による原材料使⽤量の削減

省電力化で重要な役割を担うパワーデバイスは、アナログIC(制御ICやドライバIC)と特性や仕様をすり合わせることで、システムレベルでの性能をより高めることができます。
ロームでは、SiCデバイスを中心とした各種パワーデバイスの性能を最大限に引き出すアナログICを数多く開発しており、システムに合わせて最適なソリューションを提供することができます。また、これらのパワーデバイスやアナログICは、1パッケージ化もしくは1チップ化することにより、従来デバイスが備える性能に加えて、さらなる小型化、高効率化も可能になります。
ロームは、最適化された高効率デバイスにより、システムの小型・軽量化を通じて、材料、廃棄物の削減に貢献することで、地球環境への負荷を最小限に抑制していきます。

SiCパワーデバイスを内蔵した小型・高効率の電源IC

ロームは、2019年にSiCデバイスと制御ICを1パッケージ化した、SiC MOSFET内蔵AC/DCコンバータICを世界で初めて量産しました。この製品では、従来Siデバイスと制御ICの部品構成と比較して、SiCデバイスの性能を引き出し劇的な高効率化を実現するだけでなく、部品点数計12点および放熱板を本製品1点のみにすることができます。加えて、部品間の調整も不要になり、信頼性も向上することができるため、産業機器の劇的な小型化と高信頼化、省電力化に貢献しています。

CSV戦略③ 安心、安全の追求

製品による交通事故のない社会の実現への寄与 ~機能安全を追究した製品の開発、市場への投入~

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

社会的課題:世界的な高齢化社会の到来による交通事故の増加

世界の交通事故による死者は、年間約125万人(WHO13年調べ)となっていますが、日本では中でも高齢者による交通事故が増加しています。その背景には日本の高齢化による高齢ドライバーの増加にありますが、この高齢化は、世界で急速に進行しており、発展途上国と言われている国々でさえ2050年には人口の5分の1が60歳以上になると予測されています。

ロームグループは、高齢者でも安心して運転ができるクルマ社会実現に向けて、交通事故を起こさない自動車を生み出す技術開発に貢献することが、社会課題の解決につながると考えています。

社会的課題:世界的な高齢化社会の到来による交通事故の増加

ロームの取組み:安全を考えた高品質の製品を安定的に供給することで、自動車の技術革新に寄与

ロームは、創業以来「品質第一」の企業目的のもと、開発から製造までを一貫してグループ内で行う「垂直統合」システムを採用し、あらゆる工程で高い品質を作りこみ、確実なトレーサビリティの実現やサプライチェーンの最適化で自動車市場に貢献してきました。近年は、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転に代表される技術革新が加速し、自動車の安全性を担保するには、車載部品を構成する半導体レベルでの安全目標の達成が求められています。

こうした中、ロームは、2018年に半導体メーカーとしていち早く自動車向けの機能安全規格である「ISO 26262」の開発プロセス認証を取得。2021年に機能安全をサポートする製品により、社会の安心・安全・快適に貢献するためのブランド「ComfySILTM(コンフィシル)」を立ち上げました。自動車における電子部品の役割がますます高まる中、さらに安全な製品づくりに努めると共に、製品を通じて安心・安全で環境にやさしいクルマ社会の実現に貢献していきます。

ComfySIL(コンフィシル)

機能安全に対応するADASカメラシステム向けソリューションの提供

安全に向けたADASカメラシステムに搭載されるICでは、ICの性能や信頼性を高めることは当然ですが、より安全なシステム構築のために、半導体レベルでも万が一の故障に備えた対策も重要になります。
ロームは、故障に対するリスクを明確にし、不具合発生時に許容できるレベルの安全を確保する「機能安全」に対応する電源ICや通信ICを開発しています。これらの製品は、低消費電力、低ノイズなどの優れた性能面に加えて、システムやIC自身が正しく動作しているかを監視し、故障時に異常を知らせる機能などを備えており、ADASカメラシステムの進化と安全性向上に貢献しています。

機能安全に対応するADASカメラシステム向けソリューションの提供
【担当者の声】
世の中に貢献する製品で省エネ・小型化を実現

入社から10年近く、液晶テレビ向けの電源LSIの開発に携わってきました。その後、現在はロームが注力する車載分野にシフトして車載向けのADASや自動運転につながる電源のソリューションを、日本や欧州の大手メーカーを中心に提案しています。このような最先端の技術開発に携わることができ、また、顧客企業と共に開発できる点が、本当に面白いと感じています。
車載向けについては、近年カメラ用の電源LSIと通信LSI製品をリリースしましたが、これにより、従来比10%の省エネが可能となりました。また、20mm×20mmサイズほどに小型化が進む車載カメラモジュールの中に様々な部品を搭載するため、これまでは2枚の基板が必要だったところを、製品やその周辺の部品を小型化することで1枚の基板でまかなえるようになりました。製品が広く世の中に普及していくために必要な価格低減にも貢献できました。
今後も顧客企業と対話を重ね、世の中に貢献する技術を見出し、製品化を目指してまいります。

LSI事業本部 電源LSI事業部 課長 川田 真司
LSI事業本部 電源LSI事業部
課長 川田 真司
LSI事業本部 電源LSI事業部 課長 川田 真司
LSI事業本部 電源LSI事業部
課長 川田 真司