サプライチェーンマネジメント

調達マネジメント

責任ある鉱物調達

2010年7月に制定された米国金融規制改革法(ドット・フランク法)をきっかけに「責任ある鉱物調達」への関心が近年、ますます高まっております。特に、コンゴ民主共和国(DRC)およびその隣接国で採掘される鉱物(すず、タンタル、タングステン、金:通称3TG)が、深刻な人権侵害等を引き起こしている武装勢力の資金源となっていることが懸念されております。
2013年1月に施行された米国金融改革法第1502条では、米国の証券取引所に上場している企業に対して、DRCおよびその周辺地域で採掘され、武装勢力や反政府勢力の資金源となっているこれら鉱物の使用状況に関する調査・報告が義務づけられました。2021年にはEU紛争鉱物規則が施行されることが決定しており、今後、ますます紛争鉱物調査の必要性・重要性が増すことが予想されます。新たな局面を迎えた今、ロームグループとして、人権侵害をはじめとするサプライチェーン上での重要なリスクに真摯に向き合うことを企業の社会的責任と捉え、リスクの管理・低減に向けて取組んでまいります。

方針

ロームグループでは、人権保護の観点から、対象地域において人権侵害を行っている武装勢力の資金源となっている鉱物を商品の原料として使用しない取組みを推進しています。

また、お取引先様に対しても、ロームグループの方針を理解し、遵守に向けた取組みを要請していると共に、万一、ロームグループのサプライチェーンにおいて、人権侵害の資金源となっている鉱物が原材料として使用されていることが判明した場合には、直ちに当社に報告いただき、責任ある鉱物調達の推進体制を構築し、規制への対応を進めます。

管理体制と責任ある鉱物調達調査

ロームグループではお客様に安心してローム製品を使用していただけるよう、調達部門が中心となって「OECDデュー・デリジェンス・ガイダンス」に沿った管理体制の構築に努めています。

毎年、RMIが提供するCMRTを用いて調査を実施し、3TG含有の有無、原産国の調査、製錬所の特定等の確認を行います。また、CRTを使用し、コバルトに関しても同様に製錬所の特定を進めております。そしてその調査結果をもとに、リスクの特定とデュー・デリジェンスを行い、結果を経営層へ報告し、今後の戦略と実施計画を策定しています。
また、ロームグループは、鉱物調達に関して、以下の2020年度目標を掲げました。

【2020年度目標】
  • ロームグループで使用する全製錬業者のうち、RMIのRMAP認証を取得した製錬業者の割合を現状85%から90%以上に高める。
  • お取引先様からの調査票の回答を100%回収する。

責任ある鉱物調達の実現は、サプライチェーン全体で取組まずして成し得ることはできません。今後も、お取引先様との協力・信頼関係の下、引き続き鉱物調査を行うと共に、お取引先様の調達状況把握、情報共有など双方向のコミュニケーションに取組んでまいります。

  • RMI:Responsible Minerals Initiative
  • RMAP(Responsible Mineral Assurance Process): 下記を対象とした製錬所監査プロセス
    • 対象鉱物:3TG(金、スズ、タンタル、タングステン)
    • 対象リスク:OECD ANNEX IIベース
      • 非政府武装集団 に対する直接的または間接的支援
      • 鉱物の採掘、輸送、取引に関連した人権侵害(児童労働など)
      • 公的または民間の保安隊による不法行為(みかじめ料)
      • 贈収賄および鉱物原産地の詐称
      • 資金洗浄
      • 政府への税金、手数料、採掘権料の未払い(脱税)
    • 対象地域:CAHRAs(Conflict-Affected and High-Risk Areas)
  • CMRT:Conflict Minerals Reporting Template
  • CRT:Cobalt Reporting Template

業界団体との連携

ロームは、業界団体と連携、協力および紛争鉱物の調査方法を確立するため、2012年に設置されたJEITA「責任ある鉱物調達検討会」に当初から参加しています。
児童労働や強制労働などの人権侵害の防止に向けた国際規範や要請に対応するため、お取引先様向け調査説明会の実施や第三者監査プログラムの検証を受けていない製錬所に対してRMAPへの参加を働きかけるなど、業界活動を通じて責任ある調達活動を推進しています。

界団体との連携

グリーン調達

ロームグループのグリーン調達の推進姿勢

ロームグループでは、環境方針に掲げている通り、自然資本の重要性を認識し、地球環境に貢献・配慮した取組みの推進を経営の重要課題として行ってきました。地球環境を破壊せず、社会の持続発展を目指すには、環境負荷がより少ない、資源循環型の事業活動が必要となります。ロームグループでは、サプライチェーン全体で環境法令や条例、国際ガイドラインを順守することはもちろん、環境に配慮した部品・材料の調達に取組んでいます。

化学物質管理に関わる法規制が益々厳しさを増す中、ロームグループでは、グリーン調達を推進するため、調達する部品・材料が含有する化学物質調査の精度向上に取組んできました。ローム独自の基準に照らし合わせて部材の含有物を審査し、基準を満たしたもののみを調達可能製品として「調達システム」に登録することで、使用禁止物質を調達しない仕組みを構築しています。また、お取引先様にも製品含有化学物質管理の徹底をお願いするために、グリーン調達ガイドライン※1および製品化学物質管理基準書※2を発行して取り扱う部材の指定基準への適合有無・状況を確認していただいています。

  • ※1
    ROHM Green Procurement Guidelines 006
  • ※2
    ROHM Control Standard of Chemical Substance in Product 001

調達BCP

ロームグループは、事業継続計画(BCP)の一環として、有事の際でもお客様の事業を中断させないよう平時からお取引先様との連携を深めて、速やかに復旧が可能となる体制を整備し、代替材料を準備する取組みを進めています。

調達部門におけるリスクの定義

ロームグループでは、リスク管理・BCM委員会を設立し、各部門のリスク管理を行っています。調達部門では、これまでの「品質」「納期」「価格」「コンプライアンス」の4つのリスクに加え、「安定供給」を行う上でのリスクとその影響度を評価し、特定した重要なリスクに対して四半期ご毎に対応状況を確認しています。

お取引先様の選定

「お取引先様に求める基本姿勢」にも要求しているとおり、有事の際にはお取引先様を含めたサプライチェーン全体で情報を共有し、供給継続に向けた対応が可能なお取引先様を選定しています。また、取引を開始する際には、上記当社基本姿勢をご理解の上、同意書を提出していただいております。

BCP調査の実施

有事の際にいち早くお取引先様の被災・安否状況や供給状況の確認が取れるよう、調達部材の製造会社・製造場所の情報を調査し、データベース化しています。また、その調査範囲を2次お取引先様まで拡大し、サプライチェーンのBCP状況の全体把握に取組んでいます。

  • 2020年度には有事の際の対応の迅速化に向けた、調達部材のより詳細なデータベースシステムが完成予定