リスクマネジメント

基本的な考え方と推進体制

ロームでは、その発生により業務および業績に支障をきたすおそれのある事象を「リスク」として捉え、その発生を最小限に止めるとともに、災害等が発生した場合においても円滑に事業継続または復旧を行うための対策を講じています。
具体的には、社長自らが委員長を務める「CSR委員会」の下に「リスク管理・BCM委員会」を組織し、ロームグループにおいて業務遂行上発生する可能性のある重要リスクを抽出・分析・統括管理しております。また、各リスク主管担当部署の活動状況を検証するとともに、事業継続計画(BCP)の策定を進め、あらゆる事前対策や準備に努めるよう、全社に徹底を図っております。
反社会的勢力排除に向けた社内体制としては、総務部に危機管理室を設置し、警察等外部の専門機関との連携・情報交換を行い、排除のための具体的活動の展開・徹底を図っています。

事業におけるリスク

ロームグループの財政状況、経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあると想定しています。なお、文中における将来に関する事項は2017年度末時点においてロームグループが判断したものです。

(1)市場変動リスク
半導体、電子部品業界は、エレクトロニクス製品や自動車、産業機器等の販売動向に応じて大きく変動するセットメーカーの生産動向や、競合会社との価格及び技術開発競争などにより、短期間のうちにその市場環境が激しく変動します。特に価格については、需給関係、台頭するアジアメーカーなどとの競争等により大きく下落する可能性があり、売上の維持、拡大及び利益の確保を図っていく上での不安定要因となります。
(2)為替リスク
ロームグループは開発・製造・販売の拠点を世界各地に展開しており、各地域通貨によって作成された各拠点の財務諸表は、連結財務諸表作成のために円に換算されています。そのため、現地通貨における価値が変わらない場合でも、換算時の為替レートの変動により、連結財務諸表上の損益が影響を受ける可能性があります。また、ロームグループは日本、アジア、アメリカ及びヨーロッパにて生産活動を行うとともに、世界市場において販売活動を行っています。このため、生産拠点と販売拠点の取引通貨が異なり、常に為替レート変動の影響を受けています。概して言えば、円高の場合は業績にマイナスに、円安の場合にはプラスに作用します。
(3)製品の欠陥リスク
ロームグループでは、企業目的である「われわれは、つねに品質を第一とする」を基本理念とし、厳しい品質管理のもとに生産を行っていますが、全ての製品について欠陥がなく、将来において販売先からの製品の欠陥に起因する損害賠償請求等が発生しないという保証はありません。万一損害賠償請求があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)法的リスク
ロームグループでは他社製品と差別化できる製品を製造するために様々な新技術やノウハウを開発しており、こうした独自の技術を背景に世界中で製品の製造・販売を行っています。そしてロームグループが使用している技術やノウハウが、他社の保有する特許権等の知的財産権を侵害しないように専門の部門を組織し厳重に管理しています。また、ロームグループが事業を行うあらゆる領域において、排気、排水、有害物質の使用及び取扱い、廃棄物処理、土壌・地下水汚染等の調査並びに環境、健康、安全等を確保するためのあらゆる法律・規制を遵守しています。しかしながら、事前に予期し得なかった事態の発生などにより何らかの法的責任を負う場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)自然災害・地政学的リスク
ロームグループは日本のみならず世界各地で開発・製造・販売活動を行っており、中でも生産ラインはかねてよりリスク分散のために世界の複数拠点に配置するなどの対策をとっていますが、地震や台風・洪水等の自然災害または政情不安及び国際紛争の勃発などによって拠点が損害を受ける可能性があります。これらの影響で製品供給に支障が生じた場合や、エレクトロニクス市場が大きく変動した場合等、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)M&Aリスク
ロームグループでは将来的な事業展望を踏まえ、既存事業に関連した新しい分野への進出をも視野に入れたM&Aをワールドワイドに検討・実施し、常に企業価値・企業規模の向上を図る必要性があると考えています。M&Aにあたっては、買収前に十分な調査・検討・審議の上、判断を行っていますが、買収後における想定外の事態の発生や市場動向の著変等が原因で、買収事業が所期の目標どおりに推移せず、場合によっては損失を生む可能性があります。
(7)研究開発活動リスク
現在、エレクトロニクス分野における、新技術、新製品の開発・発展はとどまるところを知りません。ロームグループも激しい技術、製品開発競争の渦中にあり、常に新製品・新技術を生み出すべく、材料から製品に至るまで日夜研究と開発に努めています。2018年3月期の研究開発費は連結売上高の約9.8%を占めています。
この研究開発活動において、例えば新製品開発のための技術力、開発力等の不足により、計画が大幅に遅れることで、市場への投入のチャンスを逸する可能性があります。また、開発が完了した新製品が市場で期待したほど受け入れられない可能性もあります。これらが現実に生じたときには、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)その他のリスクとリスクマネジメント体制
上記以外のリスクとして、物流に関するリスク、資材・エネルギーの調達に関するリスク、情報漏洩に関するリスク、情報システムに関するリスクなど、事業活動を進めていく上において、様々なリスクが財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性が考えられます。ロームグループではこうしたリスクを回避、あるいはその影響を最小限に食い止めるため、全グループを挙げてリスクマネジメント体制の強化に取り組んでいます。

事業継続マネジメント

企業目的において「良い商品を国の内外へ永続かつ大量に供給し文化の進歩向上に貢献する」と掲げ世界各地で開発・製造・販売活動を行っているロームグループでは、事業継続マネジメント(Business Continuity Management:BCM)の構築は経営における重要課題の一つであると考え、ロームグループ防火・防災方針を定め活動しています。中でも生産機能を持つ国内外の拠点では、災害などのリスクを特定した上で、対策委員会を組織し、事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)の立案や、それに基づく訓練など、有事に備えた様々な取り組みを行っています。

ロームグループ 防火・防災方針

『国際規範等の尊重と法令遵守による防火・防災の推進により、災害の未然防止と災害への備えを図る。』
ロームグループは、防火・防災の継続的な取組みを通して安心、安全な職場環境の提供と火災等の有事への備えを図るとともに、事業継続に影響を与えるような災害の未然防止に努める。

主な活動トピックス

地震リスクへの対応

(1)ローム本社:熊本地震を教訓とした勉強会
2017年12月、ローム本社にて、2016年4月に発生した熊本地震で被災された企業の被災状況、復旧対応、BCP活動及び教訓等について勉強会を実施しました。
実際の震災体験に基づく気付きや課題対応について学び、会社としてのBCPの意識や対応力の底上げを図ることができました。
ロームグループでは、他社の取組みを他山の石と捉え、実践的なBCM・BCPを推進しています。
(2)ラピスセミコンダクタ宮城:東日本大震災を教訓とした訓練
宮城にある生産拠点では東日本大震災が起きた3月11日を総合防災訓練実施日に制定し、構内常駐会社も含め、全社的な訓練を実施しています。
この訓練はBCM対策本部が中心となり、全社員参加型の避難訓練や、災害復旧本部を設置し、東日本大震災で経験した生産回復までのプロセスを疑似的に再現することにより、リアリティのある訓練を行い、地震リスクへの対応を図っています。
(3)ローム浜松:南海トラフ地震を想定した訓練と設備
浜松の生産拠点では「緊急地震速報」発令時30秒以内に構内作業者全員が被災せずに安全に避難することを『0次避難』と定義し、「避難行動指針」に基づいた『0次避難場所』への毎月1回の避難訓練にて構内作業者全員に避難行動を定着させています。
さらに、震災発生直後から3週間の日々行動基準を策定し、初動対応から復旧まで迅速に行動できる体制を構築することで生産停止によるリスクの最小化に取り組んでいます。また、免震構造の建物により地震力を低減させて被害の最小化を図っています。
(4)ローム本社:サーバー室に免震装置を導入
ローム本社では地震リスクを回避する為、基幹システムのミラーサイトを構築・運用して、本社有事には切替稼動させる体制を確保しています。2017年1月にはこれに加えてサーバー室に免震装置を設置完了いたしました。ロームでは今後も、継続してBCP対策に取組んでいきます。

水リスクへの対応

(1)World Resources Institute Aqueductを活用した水リスクの特定
ロームグループでは水リスクを特定するツールとして世界的な評価ツールである「WRI Aqueduct」を活用しています。
大量の水を使用する産業とされる半導体製造において、水の確保は生命線です。半導体製造の前工程(ウエハープロセス)の全工場が集中している日本では「渇水リスク」を優先課題として、2020年度までの長期的な取水量確保と水使用量削減目標を設定し、生産計画と環境目標にリンクした取水計画を進めています。
組立、検査をする後工程がある海外工場では「洪水リスク」を課題として特定しています。2011年のタイの洪水ではグループの工場が生産停止に陥り、施設や装置の損失および生産停止による経済的損失として社内外に大きな影響を及ぼしました。各工場の洪水リスク評価ツールとしても、「WRI Aqueduct」を活用するとともに、リスク管理・BCM委員会にてリスク評価および分析を行い、BCPの観点から複数の国・地域で同一生産品の多拠点生産の体制(生産計画・管理)を整えることで、洪水発生に伴う生産停止のリスク分散を実施しています。
(2)タイの生産拠点:タイの大洪水を教訓とした訓練
2016年9月、タイの生産拠点において、洪水発生を想定したBCM対策本部訓練を実施しました。4回目となる今回も、2011年の洪水の経験を生かして作成したアクションプランに基づいて「上流域で洪水が発生した場合」、「工業団地の止水壁が機能せず、2011年と同等の洪水に見舞われた場合」のフェーズごとに実施事項等を確認しました。
また、洪水対策として準備している止水壁の組み立て訓練、排水ポンプの起動訓練、ボートの操縦訓練など、洪水発生時に利用する物品のチェック、必要となるスキルの訓練も実施しました。
(3)マレーシアの生産拠点:洪水に負けない生産棟の建設
2016年10月、ロームグループで最大規模の工場棟がマレーシア工場に完成しました。ダイオードの増産に向けて整備を進め、既存棟と合わせて生産能力を倍増しています。新棟では2014年に発生した洪水を教訓に、1階の床高さを平均潮位+5.1mに設定しました。また、電力供給では二重送電によりバックアップを確保し、長期操業停止を防止する体制を構築しています。

火災、その他リスクへの対応

(1)ローム本社:災害への備え、自衛消防隊組織の編成と防火・防災訓練
災害に備えて自衛消防隊組織を編成し、各社の状況に応じて小型動力ポンプ、化学防護服、防災防火衣、救助資機材などを配備しています。また、災害発生時に迅速かつ適切な活動ができるよう火災や地震を想定した実践的な消火訓練、危険物を取扱うクリーンルームでの訓練、地震発生想定訓練も実施しています。さらに地域防災への協力として各地域の訓練大会や総合避難訓練に積極的に参加しています。2017年10月には総員2,013名にのぼる本社一斉避難訓練を実施し、震災に備えました。
また、夜間休日を想定して、2017年10月にシフト毎夜間避難訓練も実施しました。なお、BCPにおいて周辺火災発生時に自衛消防隊の出動や消防用設備の提供を実施することを定めています。
(2)ローム本社:防火・防災管理体制とパトロール
防火対策委員会と専門部会による「一般防火」「クリーンルーム」「危険物」「地震対策」に関するパトロールと会議を運営し、また職場ごとの火元責任者、消火器管理担当者、地震対策担当者などによる自主点検によって防火管理の強化を図り、火災・災害リスクの低減を推進しています。また、本社防火対策委員による他拠点防火パトロールを年2回、実施しました。
(3)タイの生産拠点:地域コミュニティのための初期消火の実習訓練
2017年6月、タイの生産拠点にて周辺の学校や寺院の人々64名に対し、初期消火のための座学と訓練を実施しました。この活動は地域住民とのステークホルダーダイアログでの意見を受け、生産拠点の防火委員会が中心となって実現したものです。このような活動を通じ自社だけでない地域一体となった防火対策を推進していきます。

サプライチェーンにおけるリスク対策

お取引先様に対しては「お取引先様による製品代替生産方法」「材料としてなくてはならないクリティカル原材料の調達方法の明確化」「安全在庫の確保」などに関する調査を継続して実施しています。また、CSR調達セルフアセスメントツール、CSR調達監査などを通してロームグループのサプライチェーンBCPに関する考え方の普及・浸透に努めています。